かわいそうなひとがつくる。だから買う

これまでは、福祉といえばバザー。木の端切れで作ったペンダントなどを買って貰う。

お客は慈善行為として買うのであって、品物に興味があるわけではない。欲しいから買うのではなく、かわいそうだから買うのだ。

社会福祉法人の認可をとれば、国庫補助が出て建物は立派なものが建てられる。職員の給料は地方公務員並みになる。しかし、 障害者に支払われる月給は無認可の小規模作業所と大差がない。努力しなくても、国からお金が降りてくることに、安心してしまっている。

小倉氏の怒りは、「かわいそうな者がかわいそうな状態(月給1万円)でいる」ことへの怒りだけではなかった。どうしてもっと工夫しないのか、 人が欲しいものを作れないのか。

「商品(事業)開発力」「商品(事業)企画力」を駆使して、収益を上げ、働いて収入を手にする喜びを提供できないだろうか。

それが、冒頭で述べたスワンベーカリーとスワンカフェである。スワンのパン生地は、じつは「アンデルセン」「リトルマーメイド」 のタカキベーカリーの冷凍パン生地をもとに開発したものだ。一次発酵を終えたパンを急速冷凍し、 焼き上げる前に専門の機械で解凍し二次発酵させる。店での工程を減らしながらも、いつでも焼きたてのおいしさを提供できるようになっている。 これまでにも、パンの製造・販売を手がけている作業所はあったが、いずれも粉をこねるところから始めていた。 これではかなりの熟練が必要になる。

また、粉から作るパン製品の場合、何種類もの生地を用意せねばならず、多品種のパンを焼き上げるには限界がある。冷凍生地の場合は、 あらかじめ工場で何十種類もの生地をストックしておき、そのつど必要な数だけを焼き上げる。そのため様々なパンを店頭に並べることができる。

 「スワン」という名も、「アンデルセン」のタカキベーカリーの業務提携ということから、 童話作家アンデルセンの作品にちなんで命名されている。ここでは、時給750円を支払っているから、月給では大体10万程度になる。 一般的な作業所の10倍の収入が得られる。

ハンディキャップドからチャレンジドへ

これまで英語では、心身に障害をもつ方を”the handicapped”や”the disabled”など表現してきた。 しかし、最近になって“the challenged” (チャレンジド)という言葉を使うようになってきている。障害をマイナスのものと捉えるのでなく、 障害を持つゆえに体験する様々な事象を自分自身のため、あるいは社会のためポジティブに生かして行こう、 という想いが込められている。 このような呼び名のもとには、健常者も障害者もなく、 人生と日常における様々な出来事をチャレンジすべきものと捉えることができる。” 挑戦” の旗印のもとにすべての人々は平等なのだ。 「才能がある」を意味する”gifted”より、 はるかに素敵な言葉だと思う。

超高齢化といわれる時代を迎え、高度なケアを必要とする人たちの人口比率が高まる中、働く意欲を持つ人が“チャレンジドであれ、 女性であれ、高齢者であれ”就労のチャンスを得て、社会参画や納税というかたちで「支える側」に回ることのできる社会システム。 そういうシステムの構築が、これからますます必要になる。 とくにバリアの大きいチャレンジドの就労における様々な障壁を取り除く知恵や努力は、チャレンジドのみならず、多くの人々にとって、 「自己実現可能な未来」への道を切り開くのではないだろうか。

リンク・参考文献

●小規模作業所が社会福祉法人の認可を取れば、職員の給与の補助、施設に対する補助がもらえるが、土地建物や資産が必要となるなど、 高いバリアが存在する。

 小規模作業所が社会福祉法人の認可を勝ち取るまでのドラマを綴ったものに、『どんぐりの家』(山本おさむ著 ビッグコミック 小学館) がある。小倉が今まで最も感銘を受けた書物だという。

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